現在の日本では、地方都市圏から大都市圏への人口流出が、地方の深刻な人口減少の原因になっています。一方で、著名人が地方に移り住み活躍を続けるケースや、建築家やデザイナー、アーティストなどが、地方の特産品や技術などに着目して、仕事の拠点にしているケースも多く見られます。

実際に移住を希望している人はどれくらいいるのでしょうか?全国15,000人を対象として、国内移住の傾向を調べたある調査では、日本人の4人に1人が移住を希望しており、約7%の人は1〜2年以内に移住を考えているという結果が出ています。

移住希望者の約3割は、東京圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の住民で、通勤圏内に暮らす人に移住の意向が強い傾向にあります。移住先の希望としては、4分の1は、仕事を求めて東京に移住したいと考えている地方の若者ですが、若者・中高年とも次に人気なのが沖縄です。

移住希望者が移住地域に求めるものは何でしょうか?前述の調査によると、国内移住の希望者は、安全に暮らせること、食や住居に困らないこと、よそ者、若者など多様な人を受け入れてくれること、人間関係が豊かなことが上位に入っています。人々とふれあいながら、自分らしく暮らせることを望んでいる人が多いようです。

一方、海外に移住したいと考えている人は、どんなメリットを求めて移住を考えるのでしょうか?物価の安い国で余裕のある生活を望む人や、自然の豊かな国でスローライフを夢見る人もいます。狭い日本での競争社会に閉塞感を感じている人も多いでしょう。

インターネットやテレビを通じて海外生活の様子を目にすることが多くなってきたことも、幅広い年代層が海外生活に興味を持つきっかけになっていると考えられます。

一昔前のように、生まれた土地で一生を終えることが当たり前ではなくなってきています。仕事に関しても、ひとつの会社にずっと勤め続ける人は少なくなり、会社や職種を変えることに抵抗がない人が増えています。そのような価値観やライフスタイルの多様化が、移住したいと考える人を増加させているのかもしれません。

人によって「幸せのかたち」が1つでないように、住む場所や仕事の選び方は一人ひとり違って当たり前かもしれません。どこに住んでもできる仕事があれば、好きな土地で自分らしくマイペースに暮らすことが可能になってきているのです。

さらに最近は、一か所に住むというより、海外と日本、地方と都心を行き来する人が増えています。そもそも、生活拠点に対する概念が大きく変化していることが、移住希望者の増加に影響していると言えるでしょう。

夢を叶えるため、仕事を得るために大都会に移住した人々が、ふと立ち止まって忙しすぎる日常を疑問に思い、自分のライフスタイルをリセットしたいと考える。家族との時間を大切にしたい、もっと自分らしく生きてみたい、幸せに暮らしたいと考えた結果が、移住という選択肢になってきているのかもしれません。