海外に移住する場合、資金の準備が最も重要だということは、言うまでもありません。海外生活ではどんなアクシデントに見舞われるかわかりません。そんな時に頼りになるのが潤沢な資金です。

退職後夫婦二人でゆとりある暮らしをしたい、海外に拠点を置き日本と行き来しながら仕事をしたい、若いうちに海外でいろんな体験をしながら働きたいなど、ライフスタイルによって必要資金は変わってきます。今回は、準備資金や税金、生活費の運用方法など海外移住のお金の問題についてお話しします。

海外で生活するのにどれくらいの準備資金が必要かは、滞在スタイルによって違います。例えば日本で海外就職活動をして、現地の就職先が決まっている場合は、当座の生活費さえ準備すれば問題はありません。

しかし、就労をしない退職者などは、ビザ取得時や入国審査の際に預金残高証明書を提出し、資産があることを証明しなければなりません。資産の提示については、最低額を指定している国もあります。指定されていない場合は、1,000アメリカドル×滞在月数が最低額の目安とされています。

日々の生活費をどのように運用するかということも大切です。滞在期間が3か月以内なら、国際キャッシュカードが便利でしょう。日本国内の銀行口座の円を、現地のATM機を通じて現地の通貨で引き出すことができます。

ATM機によっては引き出す通貨を選ぶこともできるので、大金を持ち歩くことなく、複数の国に滞在する場合に便利です。しかし、預け入れができないことや、残高照会をするだけでも手数料を取られる場合もあることを考えると、長期滞在には不向きです。

滞在が長期間になる場合や、頻繁に日本と行き来する場合は、現地の金融機関で口座を開設したほうが便利でしょう。海外ではサイン取引が一般的ですので、必ず本人が銀行窓口に行って契約する必要があります。

また、アジアでは口座開設の際、現地に居住している身元保証人の同意が必要な場合が多く、ロングステイビザを持っていることを条件にしている銀行も珍しくありません。

年金受給者は、海外で年金を受け取る際の税金についても、知っておく必要があります。海外に移住した場合、年金は日本の金融機関でも、海外の金融機関でも受け取ることができます。

海外転出届を提出すると、日本での納税義務はなくなり、移住した国の課税を受けることになります。日本では20%が所得税として課税されていますが、移住した国の税率が低ければ、節税することができます。

相続税や贈与税を節税するために、海外に移住する富裕層も増えています。日本の相続税・贈与税の最高税率は55%と、資産の半分以上を税金として支払わなくてはなりませんが、海外には相続税や贈与税がない国や税率の低い国があります。

節税移住をする富裕層への対策として、政府は相続人と被相続人の両方が海外に5年以上居住しなければ課税の対象とする特別措置をとっています。